はじめに
このシリーズでは、小麦による不調には3つの病態があることを紹介してきた。今回はその中でも「即時型」の代表である小麦アレルギーについて、症状を中心に詳しく解説する。
→ シリーズの全体像はこちら:「小麦アレルギー」は実は3種類あるhttps://pilot-sweets.com/wp-admin/post.php?post=150&action=edit
小麦アレルギーは、卵・乳と並んで日本における代表的な食物アレルギーの一つだ。子どもの病気というイメージを持つ人もいるが、実は大人になってから突然発症することもある。私自身がお菓子屋を営む中でも、グルテンフリーを求めるお客さんの事情はさまざまだと感じている。
それでは、具体的な症状を見ていこう。
小麦アレルギーとは
まず基本を押さえておく。
小麦アレルギーは、免疫システムが小麦に含まれるタンパク質を「異物」として認識し、抗体を作って攻撃してしまう反応である。一度この抗体ができると、次に小麦を摂取したときに過剰反応が起き、体にさまざまな症状が現れる。
最大の特徴は、症状が出るスピードが速いこと。多くの場合、小麦を食べてから数分〜数時間以内に症状が現れる。原因が比較的特定しやすいタイプと言える。
小麦アレルギーの主な症状
小麦アレルギーの症状は、大きく3つの領域に分かれる。皮膚、呼吸器、消化器だ。そして最も警戒すべきアナフィラキシーがある。
① 皮膚症状
最もよく見られるのが皮膚の症状である。
- 蕁麻疹(じんましん)
- かゆみ
- 腫れ、発赤(赤み)
- 湿疹
口の周りや、小麦に触れた手などに症状が出ることもある。
② 呼吸器症状
呼吸に関わる症状も現れる。
- 咳
- 鼻水、鼻炎
- くしゃみ
- 気管支の閉塞(ぜーぜーする、息苦しい)
風邪や花粉症と間違えやすいが、小麦を食べた後に繰り返し起こるなら、アレルギーを疑う余地がある。
③ 消化器症状
お腹に関する症状も多い。
- 腹痛
- 吐き気、嘔気
- 嘔吐
- 下痢
これらは食あたりや胃腸の不調と区別がつきにくい。だが「小麦を食べると毎回お腹を壊す」というパターンがあれば、注意が必要だ。
④ アナフィラキシー(最重症)
最も警戒すべきなのがアナフィラキシーである。
これは、皮膚・呼吸器・消化器など複数の症状が全身に同時に現れる重篤な反応だ。血圧低下や意識障害を伴うと、命に関わる「アナフィラキシーショック」となる。
アナフィラキシーの兆候が見られた場合は、ためらわず救急車を呼ぶこと。過去に経験がある人は、医師に相談のうえエピペン(アドレナリン自己注射薬)を携帯することが推奨される。
大人になってから突然発症するケース
「子どもの頃は小麦を食べても平気だったのに、大人になって急に……」というケースは実際に存在する。なぜ大人になってから発症するのか。背景には主に2つの要因がある。
経皮感作(けいひかんさ)
一つは「経皮感作」と呼ばれる現象だ。
手荒れやアトピー性皮膚炎などで皮膚のバリア機能が低下していると、そこから小麦の成分が体内に侵入し、感作(アレルギーの素地ができること)が進むことがある。特に、小麦由来の成分を含む化粧品や石けんに繰り返し触れることが引き金になるケースが知られている。
かつて、加水分解コムギを含む洗顔石けんによって多くの人が小麦アレルギーを発症した事例は、この経皮感作の代表例として広く知られている。
加齢や腸内環境の変化
もう一つは、加齢による免疫機能の変化や、腸内環境の変化だ。
年齢を重ねるとともに体質は変わる。それまで問題なかった食品に、ある日突然反応するようになることがある。
特に注意すべき特殊なタイプ:食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)
小麦アレルギーの中でも、特に知っておいてほしい特殊なタイプがある。それが「食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)」だ。
どういう病態か
これは、特定の食物を食べただけ、あるいは運動しただけでは症状が出ないのに、「食物摂取+運動」が組み合わさったときにアナフィラキシーが誘発されるという、やや特殊な病態である。
原因となる食物は小麦が最も多く、全体の約6割を占めるとされる。次いで甲殻類、果物が多い。
発症のパターン
多くは食後2時間以内の運動によって発症する。蕁麻疹や喘息のような症状から始まり、進行するとアナフィラキシーショックに至ることもある。
発症頻度は中学生で約6,000人に1人とされ、初めて発症する年齢のピークは10〜20代。若い世代に多いのが特徴だ。
運動以外の誘発要因
運動だけでなく、以下の要因も症状を誘発したり悪化させたりすることが知られている。
- 疲労、寝不足
- かぜ
- ストレス
- 月経前症状
- 気象条件
- アスピリンなどの解熱鎮痛剤の服用
「昼にパスタを食べて、午後の部活で倒れた」というようなケースでは、このFDEIAが疑われる。心当たりがある人は、運動前の小麦摂取に注意し、必ず医師に相談してほしい。
小麦アレルギーが疑われたら
ここまで読んで、自分や家族に思い当たる症状があった人もいるだろう。
小麦アレルギーは、血液検査(特異的IgE抗体検査)や皮膚試験など、医療機関で検査する方法が確立されている。グルテン不耐症と違って、きちんと診断できるのが特徴だ。
「小麦を食べると決まって蕁麻疹が出る」「お腹を壊す」といったパターンに気づいたら、自己判断で済ませず、アレルギー専門医を受診してほしい。特にアナフィラキシーのような重い症状が一度でもあった場合は、必ず医療機関にかかること。これは命に関わる問題だからだ。

まとめ
小麦アレルギーの症状について解説してきた。
- 症状は皮膚・呼吸器・消化器の3領域に分かれる
- 最重症はアナフィラキシー。命に関わるため要警戒
- 大人になってからの突然発症もある(経皮感作・加齢など)
- **食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)**という特殊なタイプもあり、原因食物の約6割が小麦
- 小麦アレルギーは医療機関で検査・診断が可能
即時型でアナフィラキシーのリスクもある小麦アレルギーは、3つの病態の中でも最も「危険度」が高いタイプだ。
少しでも疑いがあれば、必ず専門医を受診してほしい。
次回は、日本人に最も多いと考えられながら見逃されやすい「グルテン不耐症」の隠れた症状について、私自身の体験も交えて詳しく解説する。
→ 次回:グルテン不耐症の隠れた症状を徹底解説


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